好きな歌を聴きながら

映画、パフォーマンスが好き。大学生が気の向くままに思ったことを書いていきます。

自信をもっていきたいなー 『お受験』を読んで

最近勝負事が多く、自信を無くしそうなことも多々あります。特に新しい人との出会いの中で、自分の素量を図られることが幾度かありました。

こういう時に相手が見ていることの一つに、彼が自信を持っているかどうかがあると思います。なんとなく誰かと話した時の雰囲気で、コイツできるなって感じるときは、彼が声をしっかり張れていると感じた時か、何か一本芯の通ったものを見つけられた時ではないでしょうか。

 

自分の素量が見られる直前にドタバタしても、その人のポテンシャルは大して変わらないですよね。そういう直前のタイミングで、僕は昔読んだ小説『お受験』を思い出して、これでもかってくらいに自信をつけるようにしています。

 

もう半年以上前に読んだ本なのですが、かなり印象に残っていて、最後の一言を思い出すととんでもなく自信が出ます。そんなわけで、今回は一色伸幸さんの『お受験』のあらすじを書いていきます。ネタバレも多く含みますので、もし万が一今後読まれる方はご遠慮ください。。。たぶん大丈夫だと思うので進めますね。

 

『お受験』が出版されたのは今からちょうど15年前で、時代背景はその頃のもので書かれています。主人公は嫁と小学校入学前の娘と3人で暮らしている、衰えを感じつつある中年サラリーマンです。彼はもともとマラソン選手でした。入社後もマラソン部に入り、営業を半分こなしながら毎日お昼過ぎ3時からのマラソンの練習を欠かさず、会社のスポンサーで収入を得ています。

 

 

そんな彼は昔からずっと体育会系、頭の回転は悪く、馬鹿みたいな一生懸命さが取り柄。妻は育ちが良くいわゆる教育ママ。5歳の一人娘に小学校受験をさせて娘の将来を安定させたものにしたがっています。 

 

でも父は『小さいころから受験勉強なんてかわいそう。もっとのびのびと育ててやろうよ』と受験にあまり乗り気ではなく、娘も娘であんまり勉強熱心でないのか、塾の宿題もなかなか手を付けない。

 

そんな中訪れた父の突然のリストラ、もうマラソンでは生きていけないと感じ、色々あきらめて別の職を探すもなかなかうまくいかない。仕方がないから母がパートを始めることとなる。暇な父は娘の塾への送迎をして、今まで触れてこなかった娘の気持ちを知っていく。

 

父はなんとか昔の友人のつてから職を見つけ、慣れない作業をしながら働き始める。なんだか自分が自分ではないように感じていたそんな中、ふと見つけたマラソン全国大会応募のチラシ。

 

 

“これを俺の最後のレースにする”

 

 

年齢的にもマラソンを続けるのが厳しくなった彼は、そう言って大会に向けて練習し続けた。友人たちの支えもあってなんとか本番を迎えられそうだと思ったが、マラソン大会当日が娘の小学校受験の親子面談とかぶってしまった。

 

 

 

父親が頑張っていた間に、勉強嫌いだった娘も友人との関係の中で思うことがあったのか、いつからか受験に向き合うようになっていた。

 

元々受験に反対だった父と、母娘は対立して大ゲンカ。母親は学校の面談で両親が参加しないと受験で不利になるから参加してほしいと何度も訴えたが、父親にとってその日は今までのマラソン人生と決別するための大事なレース。どうしようもない時間を過ごしたが、結局すれ違ったままマラソン大会の当日を迎えることとなった。 

 

 

父親はマラソン大会の会場でスタートの音を聞き、トップで走行を続けていた。

ただ、走っていて考えてしまうのはもうすぐ、父親不在で面接を受けてしまう娘のこと。なんであの子はあんなに嫌だった受験を頑張る気になったのだろう・・・

 

そう考えているときに思い出した塾に行くときの娘の多くの行動。娘が幼いながらに初恋をし、彼と同じ学校に行きたいがために一生懸命に、嫌いな塾に通って勉強を頑張っていたのだと。。。

 

それに気付いた彼は急いでコースを外れ、ルートを変更。お金も持っていないので電車に乗ることもなく走って娘の受験会場へ。

 

一方で父の不在にイライラしながら母は娘と共に3者面談を始めることとなった。一生懸命頑張る娘だったが、なかなか面接官の問いに適切な受け答えが出来ずにいた。母親が落胆しているときに、教室の外から聞こえた『お引き取り下さい。どういうことか事情を説明してください』という声。そんな声を引き連れて父親の登場。

 

『娘の父です。遅くなりましたが今からでも入ってもいいでしょうか?』という父の言葉に顔をしかめる面接官。出来の悪い娘によく分からない親だな。という雰囲気。

 

でも娘は父の登場に大喜び。母親も安心した表情になる。母親は過去の喧嘩したことなどを思い出し、いろいろと感じることがあったのか、少し困ったように恥ずかしそうに、驚きつつ喜んでいるようでもある。

 

この瞬間に今までバラバラだった家族の気持ちがつながったんだ。すれ違いを続け、どうしようもなかった家族が、娘の受験合格、その為だけにここに集まっている。3人家族がようやく揃い、同じ目標達成に向かっていく。

 

父は面接で上手くしゃべる自信はないが、昔は様々な大会で成績を収めてきた経験もある。芯はしっかりしているので、どんなことでも聞いてこいといった表情。やっと3人が1つになって、面接官との対話を始めようとした瞬間。父は心の中で思ったことがある。きっと母も同じ思いだっただろう。この本は次の言葉で終わっていました。

 

 

“さぁ、俺たちに点をつけてみろ”

 

 

 

個人的には死ぬほどドキドキした本です。

バラバラだった仲間が一つになった瞬間。同じ目標を持てた時にはとてつもなく強いパワーが生まれると思うのです。

きっとこの3人はこの受験に合格しても不合格でも、もうそんなことは関係ないくらいに強い絆で結ばれるんだろうな。きっとどんな困難が待っていても、一緒に頑張っていけると思うんだ。いいなー。かっこいいなー

 

 

俺らはやれるだけのことをやってきた。紆余曲折もすれ違いもいろいろあったけど、もう大丈夫。今の俺らがいる。

ちょっと問題があったって、絶対解決してみせるさ。飾ることなんて何もない。どっからでもかかってきなよ。

 

そんな自信が伝わってくる一言です。

 

 

“さぁ、俺たちに点をつけてみろ

 

 

勝負事の前に、良かったらこんな風に気持ちを高ぶらせてみてはいかがでしょうか。

 お勧めの一冊です。